株式会社 根上酒造店

銘柄酒/「金明」
少しの量を三季に分けて丁寧に仕込む
入手のしにくさは県産酒の中でも屈指
国道246号から富士山側へと2キロほど入った、標高480mの富士の裾野に根上酒造店の蔵はあります。訪問した日はあいにくの小雨模様、「晴れていれば、大きな富士山が目の前にそびえています。」そう話しながら根上陽一社長自ら、井戸に案内してくれました。根上酒造店のお酒を醸す水は、地下80mから自噴する富士山の伏流水、水温は年間を通して13度で安定しています。つまり、雨水などの流入による水質の影響を受けない、100%地下水である証明です。「当社の井戸水は南アルプス系の伏流水よりも、若干ですがミネラル分を多く含むのが特徴です。ですから、この水を活かすことが、私どもらしいお酒を造る事につながります。」大変穏やかに、静かに話される根上社長は、自ら杜氏として酒造りの指揮を執られている。「昔は越後や南部の杜氏さんを使っていましたが、10年ほど前、三季醸造への移行を機に、私が杜氏として酒造りに取り組んでいます。」「小さな生産規模ですので、少人数で数回に分けて丁寧に醸造する三季醸造が、当社には合っていると思っています。」そう教えてくれました。
大正時代の研究論文からもヒントを探す
探究心旺盛な蔵元杜氏が醸す美味い酒
根上社長に経営と杜氏の両立、そのご苦労をお聞きすると、「苦労はありますが、自分の考えを即酒造りに反映できる楽しさはあります。」「例えば、大正年代の山廃仕込みの研究論文を参考に、山廃の酒に取り組んでいます。山廃仕込みは明治42年に国立醸造試験所(現・独立行政法人酒類総合研究所)で開発されましたので、この文献は山廃仕込み本来の原型、基本に近い方法が記されている訳です。現代版の山廃ではなく、本来の原型に近い山廃仕込みの酒です」と非常に熱心に話してくれました。最近、山廃仕込みという言葉自体は珍しくなくなりましたが、その内容を知る人はごく少ないと思います。山廃は『山卸廃止酛(やまおろしはいしもと)』が正式名称で、「山卸作業を廃した方法で仕込んだ酛で醸造したお酒」を『山廃仕込みの酒』といいます。山卸とは江戸時代に完成した醸造工程のひとつで、蒸したお米と麹、水を桶に入れ、粥状になるまで櫂ですりつぶす作業です。当時は水車による精米でしたので、米を蒸しても表面が硬く、麹による糖化や酵母による発酵がうまく進みません。そのため、蒸米をすりつぶす山卸作業が必要になるのですが、大変つらい重労働だったそうです。明治後期になって精米技術が発達すると、米の表面から内部へと麹菌が浸透できるようになり、山卸作業が必要なくなります。それに伴い開発されたのが山卸廃止酛です。『酛』とは酒母とも言い、文字通りお酒の元となるものです。完成した酛(酒母)を大きな醸造タンクに移し、数回に分けて米や水を足しながらお酒を仕込んでいきます。つらい山卸作業から解放してくれた山廃ですが、現在一般的な速醸酛に比べると大変に管理が難しく、しかも通常の2倍から3倍、30日近く仕込み日数がかかってしまいます。しかし、そうして仕込んだ酛はアミノ酸組成が高く、濃醇で香りも複雑な奥行きのあるお酒に仕上がります。根上社長が大正時代の山廃技術を発掘、研究した山廃造りやこだわりのお酒。もし酒販店で『金明』を見かけたら即購入をおすすめします。

主要銘柄

品名:金明
米(精米歩合):
酵母:
日本酒度:
酸度:

会社概要
社 名:株式会社根上酒造店
住 所:御殿場市保土沢850-4
連絡先:TEL. 0550-89-3555 FAX. 0550-89-7588
代表者:根上 陽一
杜 氏:根上 陽一(自社)
創 業:明治25年(1892年)
最寄駅:JR御殿場駅から車で15分。
見 学:関係者、少人数のみ。