英君酒造では長く杜氏を務めた南部の古川杜氏が引退し、平成23年から古川杜氏の元で経験を積んだ地元出身の粒来保彦杜氏が酒造りの指揮を執っています。粒来杜氏の酒造りの特長をお聞きしたところ、「徹底した洗米にあります」と教えてくれました。吟醸、大吟醸を仕込む酒米に関しては、通常の洗米工程の後、更に一工程を加えて徹底的に糠を洗い流します。「当然手間や労力は増えますが、評価の厳しい首都圏での試飲会でも、味や香りが更にクリアーになったと評価をいただいています。かけた手間の分だけお酒が良くなった、変わったと実感できます」こうした丁寧なつくりに加え、英君酒造では酒造設備への投資も積極的に行っています。温暖化に備えた蒸米放冷機への冷風供給設備や、醪を圧搾する薮田式自動醪搾機と冷蔵設備を新調するなど、酒質の向上、安定のための積極的な姿勢がうかがえます。こうした蔵元が先頭に立つ英君酒造の現場は、その酒質のように明るく溌剌とした雰囲気が印象的です。望月裕祐社長、粒来保彦杜氏、土井酒造場の榛葉農杜氏の実兄でもある榛葉武副杜氏は、みな同年代という事で、風通し良く忌憚のない意見を出し合いながら、酒造りに取り組んでいるそうです。「英君酒造の酒造りの基礎は前任の古川が作り上げてくれました。今、その基礎の上に杜氏の粒来と、副杜氏を務める棒葉のアイデアや工夫がさらに加わる。英君の酒はこれから更に変わっていきますよ」望月社長はそう話してくれました。