万人に受ける酒より、自分たちが旨いと思える酒を造る。
▲洗米機。毎分700Lの激水流が酒米を擦り洗い、糠を取り除く。
──古き良き伝統と、最新設備がうまく融合されているという印象です。ズバリお聞きしますが、土井酒造場「開運」の酒造りのコンセプトとは。
各蔵元さんそれぞれだと思いますが、「綺麗で味がありながらキレの良い酒」。これは日本酒の理想ですが、自分がそう思える酒を造りたいと思っています。
酒は嗜好品ですから、その好みは十人十色です。万人に旨い!と言ってもらえる酒は無理でしょう。そうであるならば、自分で旨いと感じる酒を、旨いと感じていただける方に飲んでいただく。そのためにも自分たちの味、「開運」の味に妥協するようなことは決してしません。
──自分が旨い!と感じる酒が最高だと。
最高かどうかは私たちが決めることではありません(笑)。
ただ、自分が旨いと思えなければ自信を持ってお勧めすることはできませんし、またそうでなければ「開運」らしさといいますか、個性がぼやけてしまう。それでは地酒とは呼べないわけです。
▲上:吟醸・大吟醸専用の仕込み室。下:出荷を待つ酒が眠る清潔な冷蔵倉庫。
──確かに、何故こんなにも蔵元さん毎に味が違うのだろう?といつも不思議に思います。本当に素人な質問で申し訳ないのですが(笑)、何故なんでしょう?
それは私にも分かりません(笑)。ただ、造る過程での微妙な加減で味が変わってしまうのは間違いありません。それに、蔵元さんそれぞれで理想とする酒が違うってことではないでしょうか。絶対的な正解の味なんてものはないのですから。
──なるほど。でも微妙な加減で味が変わるとなると、毎年「開運」の味・質を再現するのには、とても苦労されるのでは。
昔の酒造りと違って、今では酒を造る設計段階で味が決まる。言い換えれば、目指す酒の味を決めてから、酒造りの設計をします。こうすればこういう酒ができるはずだという組み立てですね。当然、毎年の米の出来も違います。今年の米は水を吸いやすいとか。そうした諸々条件を計算しながら設計する訳ですから、理想とする酒の像がブレなければ、ちゃんと「開運」の酒ができあがります。