甘みとふくらみがパッと出て、キレがいい、静岡らしい味のある酒を造りたい。
──いろいろユニークな取り組みが興味深いですが、社長がお考えになる「地酒」とはどんなイメージなのですか?
地酒は、地元の舌に合わせていくものだと考えています。焼津はかつお、清水はマグロ、ここ沼津は干した魚、よそに比べてえぐみのあるものが圧倒的に多い。その味に合わせて静岡らしさの残る味が基本になりますね。
最近は山廃造りにも挑戦しています。酸味のある、ちょっと面白い酒ですよ。沼津周辺には魚だけでなく、ブランド肉も多いですから、この山廃を肉料理に合わせたら・・・などいろいろ考えています。
──その地域の産物を引き立てる、また引き立たせてくれるのが「地酒」ということなのですね。
では地酒だけに限らず、お酒の在り方についてはどう思われますか?
酒の旨さはそのスペックだけじゃない、酒を楽しむシチュエーションなんですね。日本ならではの風情といったものかな。例えば蕎麦屋さんで、まず簡単なつまみを頼んで一杯飲む。そして、ささっと一枚のざる蕎麦を食べる・・・ような。粋な感じ。構えない、気取らない、日常の中にすっと溶け込むような親しみを感じさせるものであってほしいですね。
──お酒の飲み方として、何かご提案はありますか?
できれば、ワインをデキャンターに移すように、お酒も一度片口に入れて、それから広口の盃で飲む、それだけで全然違いますよ。ぜひ試してみてください。
──盃ですね。今度試してみます。
それと、今他県でも酵母の開発が盛んになるなど、より地酒同士の競争が激しくなっていますが、そのことについてどう思われますか?
他県の追い上げは特に意識していません。私としては、自分たちの酒のネクストステージを見据えていきたい。新しいことにもっともっとチャレンジしていきたいですね。
──エネルギッシュで頼もしいです。そういえば、社長は柔道5段だそうですね。道場で柔道も教えてるとか?
はい、小・中学生を対象にした週2日の柔道教室なんですが。酒の仕込み時期も休まず続けています。肉体的にはきついものがありますが、日頃のストレスも柔道がうまい具合に消化してくれて、いい気分転換になっているんです。
──ありがとうございました。
(取材日:2007年7月31日)