他の土地の人に自分の故郷の酒だと、自慢できる酒。
▲井戸から組上げられた、富士錦の仕込み水。かなり大きなタンクに、青く水がたたえられており、ファインダーを覗いていると距離感がつかめなくなる。
──1万人は、すごいです。皆さん楽しみにしてらっしゃるのでしょうね。
大人だけではなく、家族で一緒に楽しめるよう、移動動物園や遊園地なども作ります。
この里山の豊かな自然の中で、大人が酒を楽しそうに酌み交わす姿を子どもたちが目にする・・・自然な思い出のひとコマの中に酒が残るわけですよね。「お酒は、こう楽しく飲むんだ。」と、子ども心に認識される。それだけでも大きな意義になっていくのではないかと考えています。
──子どもたちは、将来の大切なユーザーです(笑)。すごく地元芝川にこだわって酒造りをされていますが、県外の地酒についてはどう思われますか?
県外には県外の道。静岡は静岡の道を行けばいいと思います。地酒という商品の性格上そうならざるを得ないと思っていますし、そうでなければ価値がない。ですから「富士錦」はこんな酒ですよ、と説明してくれる売り手さん、ユーザーさんとの出会いが大切になります。
──酒と人とのかかわりの中で、大切なのは何だとお考えですか?
大切なのは出会い方だと私は思います。地酒は、棚に置いてあれば売れるという商品ではありません。ちゃんと「富士錦」の酒を分かってくれている売り手がいて、お客様にお勧めしてくれる。そして、うちの酒を気に入っていただけた。そんな素敵な出会い方をすれば、無意識のうちに「好きなもの」として認識されます。信頼関係の中で、そんな輪が広がっていけばいいと思います。
▲大型の冷蔵倉庫内には、コンピュータ制御された棚が並ぶ。徹底した品質管理のもと、富士錦の製品が出荷されて行く。
──先ほど「地元で一番になれ」という言葉をお聞きしましたが、芝川柚野の蔵としてのあり方についてお考えをお聞かせください。
蔵としてもそうですが、本来企業のあるべき姿というのは、雇用も含め地域に貢献できるものにならなければならないと思っています。そしてその土地の酒蔵として、地域の皆さんに愛される。よその土地の人に自分の故郷の酒だと、自慢してもらえる。そんな酒を造り続けなければならないと考えています。
──ありがとうございました。
(取材日:2007年7月31日)