新しい建屋で駿河酒造場としての新たな酒造りに挑戦する
取材にうかがった時期は、新しい蔵での試験醸造の真っ最中でした。移設した酒造設備の具合や作業動線など、実作業を通して検証しています。
「本番の仕込が始まってしまうと、問題があってもどうにもなりませんから」。と萩原社長が教えてくれた。
左が駿河酒造場の蔵元、萩原社長です。すごく優しい、飄々としたお人柄ですが、作業を見つめる眼光は、さすがに厳しい。
社長の後ろは、汲み上げた井戸水(安倍川の伏流水)を貯めておくタンク。当たり前の事ですが、酒造道具を洗う水も、酒を仕込む水も同じものを使います。そのため、酒造りには大量の水が必要となります。
名杜氏から薫陶を受けた小林和範杜氏が造りの指揮をとる
右上は、駿河酒造場の小林和範杜氏。前任の小田島杜氏から、杜氏職を引き継ぎました。南部流の小田島杜氏は理論派で知られ、華々しい実績を誇る名杜氏として有名です。小林杜氏は、この小田島氏から直接薫陶を受けた直系の弟子。師である小田島杜氏とも連絡をとりながら、新しい蔵での仕込みに挑んでいます。
写真の部屋は真新しい麹室。この日も徹底的に室を磨き上げていました。どこの蔵であっても、麹室に入らせていただく時は気を使います。私の場合、カメラや三脚なども除菌したものを持っていきます。無論、納豆を食べて…なんて論外です。小林杜氏も新しい麹室にかなり神経をお使いのようでした。
右下は新しい醸造蔵の様子。掛川の頃の蔵はかなり古い建物でした。それはそれで趣のある佇まいでしたが、温度管理などの面では苦労されていたのではないかと思います。新しい蔵では、空調設備により温度管理が精密に行えます。この新しい環境に、新進気鋭の新杜氏が加わり、どんな酒が醸されていくのか。来年の新酒の時期が、いまからとても楽しみです。
(取材日:2010年)